大喜利天文台
お題
家にでっかい黒板があるそうですが、どんな感じですか?
寝坊さんの作品
「真実を見せてやろう」

そう父が言って三重に鍵がかかった扉を開ける。そういう話のときはメガネをかけててほしかった。扉の先にあったのは、壁一面の巨大な黒板、そしてこの世界の真実だった。「空は青い」「海は広い」「学びは無限である」僕は数えきれないほどの文章、「世界の真理」に見惚れていた。端っこの方に「おれのチンチン世界一」って書かれてたのはとりあえず無視した。父は恍惚の表情を浮かべる僕にこう言った。
「次はお前が書き足す番だよ」マジか。

試しに「父親はバカ」と書いてみた。
「あひーーーー あひひーーー あひ?」
あ、これマジだ。すげぇ。

「バカ」の部分を消し、「父親は牛」と書き換えた。
「モーーーーーー モーーーー モ?」
これ楽しい。

「父親は歌が上手い」と書いた

『紅に染まった この俺を』
あんま歌唱力って感じじゃない歌選ぶな

「父親は隠れんぼの天才」

父親はまず上を見た。

「父親は激ヤバ意識高い系」

父親はカタカナになった。

「父親はおにぎりマニア」

「よし次は食べ物以外も入れてみるぞ」やめろ。

「父親は後悔の残るアンカー」

父親は握力を鍛え出した。

「父親は優しい組員」

父親はこの指とまれでメンツを決めた。

「父親は掃除機壊し専門家」

父親は「まずは口をこう、口をこう」と繰り返し呟いてて、武井壮みたいだった。

「父親は違法建築」

父親は少しだけ浮いた。

「父親は柴田理恵」

父親は柴田理恵になった。




長い時間、父親で遊んだ。



最後に「父親は大きめのカバ」と書いた。
父親は大きめのカバになった。少し反抗の色が見える目をしていた。

まぁこの辺でいいか。ふぅと一息ついた。
大きめのカバを部屋に残し、三重の鍵を全てかけて寝た。

翌朝行きつけの小学校に向かうため家を出ると、人がみんな上を向き、口をあんぐり開けて歩いていた。

何事だと急いで帰って例の部屋に行くと、数本の砕けた白チョーク。

黒板を見ると、曲がりに曲がった字ともつかぬ字で「おいしいあめがふる」と書かれていた。
カバは幸せそうな顔をして倒れていた。
目元から流れていた一粒の涙が、まだ忘れられない。
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4点guniguni
2点魂の裏切りの夜
2点シャープくん
3点小粒庵
3点遠くを見ている
3点とも
3点オワコンパンダちゃん
2点板野
4点アガリブル
2点森山
4点しろねこ
2点眠気
2点エコノミー
2点RANRANRAN
3点ねこライト
3点ろっく