大喜利天文台
お題
いきなり大勢の老人たちに土下座されて、そこからどうなった?
とびこむケロッグさんの作品
「ここに私たちの家を建ててください」

そう懇願されたので早速建設に取り掛かったものの、作業は難航を極めた。というのも老人たちが土下座したままその場から離れないのである。それだけならまだしも、一時間経過するごとに一人の老人が立ち上がるのだ。彼らはそれを「時計の時間」と呼ぶ。

時計の時間の度に作業は止まる。溜まるフラストレーション。向ける苛立ちの矛先。傷つく柱。立ち上がった老人が出来たばかりの天井に頭をぶつけてしまう、なんてことがないよう細心の注意を払う必要もある。人を殺めることは恐ろしいことである。私は設計図を変更し、老人たちのいる場所は吹き抜けにすることとした。時計の時間は正確。溜まるフラストレーション。向ける苛立ちの矛先。傷つく柱。

一体どれだけの期間が経過しただろうか。老人たちは絶えず時計の時間を繰り返し、私はその度に手を止めながらも作業を続けていった。完成は近い。もちろん、それに比例するようにフラストレーションは溜まり続けている。コップの水はじきに溢れるだろう。


「…できた!!できました!!!」

やっと完成した!老人たちの家が!

しかし、そこに老人たちの姿はなかった。時計の時間を正確に返す老人たちは最初から存在しなかったのか?否、確かに存在した。この目で何度も見た、何度もフラストレーションが溜まった、何度も柱を傷つけることで苛立ちを抑えた、何度も何度も………

私は一体どうして疑わなかったのか。今となってはよくわからない。寒さのあまり見た幻覚だったのかもしれない。そう思うことで納得した。なにしろこの建物だけは存在するのだから。コップの水はとうに溢れきっている。



イオンモール東大阪店 開店!(2021年3月閉店)
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2点三収組
3点アガリブル
2点とりふぐ
3点サメVS巨大タコス
2点とも
3点小粒庵
2点エコノミー
3点モモス
3点guniguni
4点渡利 巣手呂
2点茹で腕